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第25回(2006年度)

  • jsyppmeeting
  • 2020年12月21日
  • 読了時間: 4分

@植物生理学会(つくば)

担当幹事:河野 智謙(北九州市立大)、玉置 雅紀(国立環境研)


葉緑体へのタンパク質輸送機構とその生理学的意義

稲葉 丈人(岩手大学・21世紀COEプログラム)


 植物細胞に特有な細胞内小器官である葉緑体は、光合成など様々な代謝活動の場である。ほとんどの葉緑体タンパク質は核ゲノムにコードされているため、葉緑体での代謝活動は細胞質ゾルから葉緑体へのタンパク質の輸送により支えられていると言って過言ではない。2000種類を超えるタンパク質の葉緑体への輸送を支えているのが、葉緑体タンパク質透過装置Toc-Tic複合体である。この透過装置複合体は、受容体、チャネル、分子シャペロンなどの機能を持つと推測される様々なタンパク質により構成されている。しかしながら個々のタンパク質の機能については様々な仮説が提唱されており、作用機構については不明な点も多い。葉緑体へのタンパク質輸送機構の一端を分子レベルで明らかにするため、演者らは葉緑体内包膜の透過装置(Tic複合体)主要構成因子であるTic110タンパク質に着目し、遺伝学及び生化学的解析を行った。

 これまでにTic110の機能及びトポロジーについて三つの異なる仮説が提唱されてきた。そこで、これらの仮説を検証するため、様々な生化学的手法を用いて詳細な解析を行った。その結果、Tic110はN末の膜貫通ドメインと可溶性のストロマ側ドメインにより構成されること、可溶性ドメインは主にα-helixから成ること、さらにこのドメインが葉緑体移行シグナルに直接結合することを証明した。以上の結果は、「Tic110はストロマ内の分子シャペロンが前駆体タンパク質と相互作用するための足場を提供する」という仮説を支持するものであった。

 次に、Tic110の生体内での機能を明らかにするため、遺伝学及び生理学的解析を行った。まず、TIC110 T-DNA挿入株及び発現抑制株を解析し、Tic110が色素体形成に必須であることを明らかにした。Tic110発現抑制株を用いてウエスタンブロットを行ったところ、光合成関連タンパク質のみならず様々な葉緑体タンパク質の蓄積が減少していた。また、イムノアフィニティー精製により、Tic110は既知の全ての外包膜Toc複合体と相互作用していることが明らかになった。これらの結果は、Tic110が葉緑体移行シグナルを持つほぼ全てのタンパク質の輸送に不可欠であることを示唆している。次にTic110の各ドメインを欠失したタンパク質をシロイヌナズナで発現させ、Toc因子及びTic因子との相互作用を解析した。その結果、Toc因子との相互作用にはTic110ストロマ側ドメインが重要な機能を果たしていること、さらにTic110自身がオリゴマーを形成していることが明らかになった。これらの結果を踏まえ、葉緑体へのタンパク質輸送の分子機構について考察したい。


陸上植物における細胞分裂機構の多様性と進化

嶋村 正樹(地球環境産業技術研究機構・植物研究グループ)


 本講演では陸上植物(コケ,シダ,種子植物)でみられる微小管からなる細胞分裂装置の多様性について紹介し、陸上植物の細胞分裂機構の進化の系譜について議論する.コケ、シダ植物では、生活環の中で鞭毛を持つ精子を形成する過程に限り、中心小体を持つ中心体が出現する。この中心体は精原細胞の分裂において紡錘体の微小管形成中心として機能し、中心小体は鞭毛基部装置の一部へと変化する。また、一部のコケ植物の体細胞分裂前期の紡錘体極には、極形成体と呼ばれる、中心小体をもたない中心体様の構造が存在する。さらに、コケ植物と一部のシダ植物では、葉緑体が細胞内に1-2個しかない細胞が見られることがある。この細胞では、核の分裂に先立って葉緑体が分裂し、葉緑体表面から紡錘体が形成される。これら下等陸上植物に特徴的な細胞分裂装置について、動物細胞や藻類の中心体に存在し、微小管形成の場として機能していると考えられているγチューブリンの局在を調べた。

 その結果、微小管形成中心の位置にγチューブリンが明瞭に局在することが明らかになった。これまでの種子植物のチューブリンの局在を調べた研究では、中心体などが存在せず、微小管形成中心の位置が不明瞭なこともあり、γチューブリンの微小管形成中心への局在を明確に示すことができなかった。今回の研究は、植物のγチューブリンも動物や藻類と同様、微小管形成開始点としての役割に関与していることを示している。

 γチューブリンの局在パターンからみた下等陸上植物における多様な紡錘体形成様式は、藻類型から被子植物型に移行する様々な進化段階を反映しているようにみえる。初期の陸上植物は、植物に特徴的な表層微小管という新たな微小管系を発達させる中で、鞭毛を形成する時以外は中心体を形成しなくなったのかもしれない。その代わりとして葉緑体表面を紡錘体の極として使用していたが、1個の大きな葉緑体を持つ単色素体性細胞から、機動力を持った小さい葉緑体を多数持つ多色素体性細胞へ進化していく過程で、紡錘体の微小管形成位置は分散型に移行していったのではないだろうか。今後、下等陸上植物の細胞分裂様式の多様性をさらに明らかにしていくことにより陸上植物の細胞分裂様式の進化の系譜を追うことは可能であると考えている。



 
 
 

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